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2009年9月 

演歌にポップスをとり入れた川瀬巴水

 20世紀の初頭にはヨーロッパでも、遠近法による「面」や塊をリアルに描こうとする絵の描き方に、東洋的な「線」をとり入れる方法が印象派などによってさかんに行われました。
 日本でも伝統的なやまと絵や浮世絵の描き方にあきたらなくなった絵描きたちが、西洋画の遠近法や陰影法を、日本の伝統的な描き方になんとかうまくとり入れようと、色々な試みを行いました。
 その一人が川瀬巴水さんです。「今月の一枚」を見れば分かるように、巴水の絵は広重、北斎の浮世絵のようにも見えますが、モノの形がリアルだし遠近感もちゃんと出ているので、ずっとモダンな感じがしますね。
 以前のような演歌調では描いても面白くないしウケも悪いので、思いきってポップスをとり入れたようなものです。
 巴水はこれを日本画や水彩画として描かずに木版画として制作しました。木版画ですから、まず線描で下絵をつくり、その版に色を刷り重ねて行きます。仕上がりは当然、広重などの風景版画と同じように線の輪かくが強く感じられるものになっています。
 ただ巴水にはアンリ・リヴィエール(前回「今月の絵」)ほどには「線」へのこだわりはないようで、むしろ仕上がりの絵における情感や雰囲気に重点がおかれているように思われます。

<今月の絵>
明石町の雨後(1928年・昭和3年)
江戸浮世絵の題材でもあった夕景、夜景あるいは雨、雪、風などを巴水は数多く題材にしている。
馬込の月(1930年・昭和5年)
江戸浮世絵の題材でもあった夕景、夜景あるいは雨、雪、風などを巴水は数多く題材にしている。
赤坂弁慶橋(1931年・昭和6年)
明治神宮菖蒲園(1951年・昭和26年)
昭和の東京各地を描いた作品が多い。橋、人物、花には黒線を用い、木版画浮世絵の味わいを感じさせます。
松林のデッサン
海辺の家のデッサン
川瀬巴水
巴水は現場では克明なスケッチデザインを行い、これを元にして木版画の下絵を作るようにしていたようです。多くの画家はスケッチの線の方が実は仕上がり作品より魅力的ですが、巴水はどうも逆のタイプのように思えますが、いかがでしょうか?